○新宮町環境基本条例

平成25年3月27日

新宮町条例第12号

私たちのまち新宮は、福岡県の北西部に位置する豊かな自然と歴史あふれる町である。江戸時代から防砂防風の歴史が刻まれている白砂青松の新宮海岸、樹齢300年を超えるクスノキの大木が生き続ける立花山、そして大陸との交流の舞台となった玄界灘に浮かぶ相島など先人たちから受け継がれた豊かな恵みは町の誇りとなり、私たちの心の癒しとなっている。

しかし、近年の都市化や私たちに物質的な豊かさや利便性をもたらした社会経済活動は、資源やエネルギーを大量に消費し、資源の枯渇や廃棄物の増大などの深刻な環境問題を生みだした。その結果、環境への影響は、環境の持つ復元能力を超え、地域にとどまらず地球的規模の環境を脅かすまでに至っている。

もとより、私たちは、安全かつ健康で文化的な生活を営むことができる権利を有するとともに、先人から受け継がれた豊かな自然や歴史・史跡を守り育み、次世代の子どもたちに引きついでいく責務を担っている。

そのため、町、町民及び事業者のみならず本町を訪れるすべての人が環境問題を身近な問題として捉え、それぞれの役割分担のもと、その責務を果たし、健全で恵み豊かな環境の保全と創造に取り組まなければならない。

このような認識の下に環境への負荷を低減しつつ人と環境に優しい環境共生のまちづくりを推進し、次世代の子どもたちへ引き継いでいける持続可能な社会の実現を目指して、ここに、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、環境の保全及び創造について、その基本理念を定め、並びに町、町民、事業者及び本町を訪れるすべての人(以下「滞在者」という。)の責務を明らかにするとともに、環境の保全及び創造に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の町民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 環境への負荷 人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。

(2) 地球環境保全 人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生動物の種の減少、その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに町民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。

(3) 公害 環境保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。)土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。)に係る被害が生ずることをいう。

(基本理念)

第3条 環境の保全及び創造は、環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが町民の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであること及び生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っていることを踏まえ、現在及び将来の世代の町民が、健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受するとともに、人類の存続の基盤である環境が将来に渡って維持されるように適切に行わなければならない。

2 環境の保全及び創造は、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会を構築することを目的として、町、町民、事業者及び滞在者の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われなければならない。

3 地球環境保全が人類共通の課題であるとともに、町民の健康で文化的な生活を将来にわたって確保する上での課題であることを踏まえ、地球環境保全は、町、町民、事業者及び滞在者それぞれが日常生活及び事業活動において積極的に推進されなければならない。

(町の責務)

第4条 町は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、環境の保全及び創造に関する総合的かつ計画的な施策を策定及び実施する責務を有する。

2 町は、環境に影響を及ぼすと認められる施策の策定及び実施に当たっては、環境への負荷の低減に努めなければならない。

3 町は、第1項の施策の実施に当たっては、滞在者に対しても、その協力が得られるように、当該施策の周知に努めなければならない。

(町民の責務)

第5条 町民は、基本理念にのっとり、その日常生活に伴う環境への負荷の低減に努め、環境保全及び創造に自ら取り組むとともに、町が実施する環境施策に積極的に協力する責務を有する。

2 町民は、その日常生活の中で環境の保全及び創造についての関心と理解を深めるよう努めなければならない。

(事業者の責務)

第6条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、これに伴って生ずる公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有する。

2 事業者は、基本理念にのっとり、その事業や活動に係る製品その他のものが使用され、又は廃棄されることによる環境への負荷の低減に資するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。

3 前2項に定めるもののほか事業者は、その事業活動に関し、これに伴う環境への負荷の低減その他環境の保全に自ら努めるとともに、町が実施する環境の保全と創造に関する施策に協力する責務を有する。

(滞在者の責務)

第7条 滞在者は、基本理念にのっとり、環境の保全及び創造に自ら努めるとともに、町が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力する責務を有する。

(基本方針)

第8条 町は、環境の保全及び創造に関する施策の策定及び実施に当たっては、基本理念にのっとり次に掲げる基本方針に基づき、各種の施策相互の連携を図り、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するものとする。

(1) 人の健康が保護され、及び生活環境が保全され、並びに自然環境が適正に保全されるよう、大気、水、土壌その他の環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること。

(2) 生態系の多様性の確保、野生生物の種の保存その他生物の多様性の確保が図られるとともに、森林、農地、水辺地等における多様な自然環境が地域の自然的社会条件に応じて体系的に保全されること。

(3) 人と自然との豊かな触れ合いを確保するとともに、地域の個性を生かした都市景観の形成及び歴史的文化遺産の保全に努め、潤いと安らぎのある快適な環境を創造すること。

(4) 廃棄物の減量及び適正な処理、資源の循環的な利用並びにエネルギーの有効利用により、環境への負荷の少ない循環型社会の構築を図ること。

(5) 地球環境保全に資する施策を積極的に推進すること。

(環境基本計画)

第9条 町は、環境の保全及び創造に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全及び創造に関する基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。

2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

(1) 環境の保全及び創造に関する目標

(2) 環境の保全及び創造に関する施策の基本事項

(3) 前2号に掲げるもののほか、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 町長は、環境基本計画を策定するに当たっては、町民の意見を反映できるように必要な措置を講じなければならない。

4 町長は、環境基本計画を策定するに当たっては、あらかじめ、第22条に規定する新宮町環境審議会の意見を聴かなければならない。

5 町長は、環境基本計画を策定したときは、速やかに、これを公表しなければならない。

6 前3項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。

(町の施策の策定等に当たっての配慮)

第10条 町は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境の保全について配慮しなければならない。

(年次報告等)

第11条 町は、毎年環境の状況及び町が環境の保全及び創造に関して講じた施策に関する報告書を作成し、これを公表しなければならない。

(環境影響評価の推進)

第12条 町は、土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業を行う事業者がその事業の実施に当たり、あらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、環境の保全について適正な配慮をすることができるように必要な措置を講ずるものとする。

(公害等の防止)

第13条 町は、公害の原因となる行為及び自然環境の適正な保全に支障を及ぼすおそれのある行為に関し、必要な規制の措置を講ずるものとする。

2 前項に規定するもののほか、人の健康又は生活環境に係る環境の保全上の支障を防止するため、必要な規制の措置を講ずるよう努めなければならない。

(環境への負荷を低減するための経済的措置)

第14条 町は、町民又は事業者が行う環境への負荷の低減を図るための施設の整備その他環境の保全に資する取り組みを支援するため、必要があると認めるときは、助成その他の措置を講ずるよう努めるものとする。

2 町は、環境への負荷の低減を図るため、必要があると認めるときは、町民及び事業者に対し、適正かつ公平な経済的負担を課すことについての調査及び研究を行い、その措置を講ずるよう努めるものとする。

(環境の保全及び創造に関する施設の整備その他の事業の推進)

第15条 町は、緩衝地帯その他の環境の保全上の支障を防止するための公共的施設の整備及び汚泥のしゅんせつその他の環境の保全上の支障を防止するための事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。

2 町は、下水道、廃棄物の公共的な処理施設その他の環境の保全上の支障の防止に資する公共的施設の整備及び森林の整備その他の環境の保全上の支障の防止に資する事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。

3 町は、公園、緑地その他の公共施設の整備その他の自然環境の適正な整備及び健全な利用のための事業を促進するため、必要な措置を講ずるものとする。

4 町は、前2項に定める公共的施設の適正な利用を促進するための措置その他のこれらの施設に係る環境の保全上の効果が増進されるために必要な措置を講ずるものとする。

(環境への負荷の低減に資する製品等の利用の促進)

第16条 町は、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、製品、役務等の利用が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。

(環境の保全及び創造に関する教育、学習等)

第17条 町は、環境の保全及び創造に関する教育及び学習の振興並びに環境の保全及び創造に関する広報活動の充実により、町民及び事業者が環境の保全及び創造についての理解を深めるとともにこれらの者の環境の保全及び創造に関する活動を行う意欲が増進されるようにするため、必要な措置を講ずるものとする。

(民間団体等の自発的な活動の推進)

第18条 町は、町民、事業者又はこれらの者の組織する民間の団体(以下「民間団体等」という。)が自発的に行う緑化活動、再生資源に係る回収活動その他の環境の保全及び創造に関する活動が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。

(情報の提供)

第19条 町は、第17条の環境の保全及び創造に関する教育及び学習の振興並びに前条の民間団体等が自発的に行う環境の保全及び創造に関する活動の促進に資するため、個人及び法人の権利利益の保護に配慮しつつ環境の状況その他の環境の保全及び創造に関する必要な情報を適切に提供するよう努めるものとする。

(監視等の体制の整備)

第20条 町は、環境の状況を把握し、環境の保全及び創造に関する施策を適正に実施するために必要な監視、測定等の体制の整備に努めるものとする。

(国及び他の地方公共団体との協力)

第21条 町は、広域的な取り組みを必要とする環境の保全及び創造に関する施策については、国及び他の地方公共団体と協力して、その推進に努めるものとする。

(環境審議会)

第22条 環境基本法(平成5年法律第91号)第44条の規定に基づき、新宮町環境審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会は、次に掲げる事項を調査及び審議する。

(1) 環境基本計画に関すること。

(2) 前号に掲げるもののほか、環境の保全及び創造に関する基本的事項に関すること。

3 審議会は、前項に規定する事項に関し、町長に意見を述べることができる。

4 審議会は、委員10名以内をもって組織する。

5 委員は、識見を有する者、公共的団体等の構成員及び町内に住所を有する者のうちから、町長が委嘱する。

6 委員の任期は、2年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。

7 前各号に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関して必要な事項は、町長が別に定める。

この条例は、公布の日から施行する。

新宮町環境基本条例

平成25年3月27日 条例第12号

(平成25年3月27日施行)