人権とは「すべての人々が生命と自由を確保し、それぞれの幸福を追求する権利」あるいは「人間が人間らしく生きる権利で、生まれながらに持つ権利」です。しかし、私たちの社会や日常生活の中には、人権をめぐるさまざまな問題が生じています。

部落差別(同和問題)

部落差別は、日本社会の歴史的過程で形づくられた身分差別により、日本国民の一部の人々が長い間、経済的、社会的、文化的に低い状態を強いられ、今なお、日常生活の上でさまざまな差別を受けるなどしている、わが国固有の人権問題です。この問題は、決して過去のものではなく、今なお同和地区の問い合わせやインターネットを使った差別的な情報の書き込みなどが起こっています。一人ひとりが正しい理解と認識を深め、差別意識の解消に向けて取り組むことが必要です。

女性の人権問題

女性の人権を守るさまざまな動きがありますが、現実には女性の就業環境、家事・育児・介護の負担、セクシュアル・ハラスメント、ドメスティック・バイオレンスなど、さまざまな問題があります。この背景には、私たちの日常生活の中に「男は仕事、女は家庭」といった固定的な性別役割分担意識などの考え方が、いまだに根強く残っている状況がうかがえます。男女が互いにその人権を尊重し、責任を分かち合い、性別にかかわりなく自らの個性と能力を発揮できる社会の実現に向けて取り組むことが必要です。

子どもの人権問題

子どもたちを取り巻く家庭や社会環境は、近年の少子化や核家族化、家庭の教育力の低下や地域社会のつながりの希薄化など著しく変化し、その中で、児童虐待、いじめや不登校など多くの問題が生じています。子どもは大人と同じように、1人の人間として尊重され、安心して生活する権利を持っています。子どもが心の豊かさやゆとりを大切にしながら、社会の中で健やかに成長していくためには、子どもの権利や自由を最大限に尊重し、学校・家庭・地域が連携してそれぞれの役割を果たしていく必要があります。

高齢者の人権問題

豊かな経験や知識がありながらも、年齢を理由に就業や社会的活動への参加が制限されるなど、高齢者の人権にかかわる問題が生じています。また、介護を要する高齢者への虐待の問題があります。すべての高齢者が1人の人間として尊重され、社会の重要な構成員として生きがいを持って生活できるよう、高齢者についての理解を深め、互いに助け合う体制づくりを進めていくことが必要です。また、高齢により心身機能が衰え、介護が必要になっても、その人が望む尊厳を保った生活ができるよう支援し、安心して暮らせる社会をつくっていくことが必要です。

障がい者の人権問題

障がいのある人が職場で差別待遇を受けたり、車いすでの乗車、入居や店舗でのサービス等を拒否されたりするなどの問題が発生しています。心身の疾病や機能障害があっても、社会的な不利や差別は社会の努力でなくすことができます。障がいについての正しい理解を深め、障がいがある人もない人もお互いに認めあい、尊重し支えあいながら暮らしていける共生社会をつくっていくことが必要です。

外国人の人権問題

言語や宗教、生活習慣などの違いから、外国人の人権に関わるさまざまな問題が生じています。また、特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動いわゆるヘイトスピーチが社会的問題となっています。国際社会の一員として、一人ひとりが正しい理解と認識を深め、文化の違いや多様性を尊重し、人種・民族・国籍を問わず、お互いに尊重しあう社会をつくっていく必要があります。

感染症患者等の人権問題

エイズ、ハンセン病、新型コロナウイルス感染症などの感染症に関する知識や理解の不足から、日常生活のさまざまな場面で差別やプライバシー侵害などの人権問題が生じています。感染症患者・元患者やその家族、医療従事者等が不当な差別や偏見に苦しむことのないように、一人ひとりが感染症と感染防止に関する正しい知識を身につけ、正しく理解することが必要です。

犯罪被害者等の人権問題

犯罪被害者やその家族・遺族は、直接的な被害だけではなく、いわれのない偏見や中傷などの二次的被害を受けるなどの人権問題が生じています。犯罪被害者が置かれている状況、犯罪被害者等の名誉や生活の平穏への配慮の重要性等について、一人ひとりが関心と理解を深めていくことが必要です。

インターネットによる人権侵害の問題

インターネットの普及に伴い、その匿名性、情報発信の容易さから、インターネット上でプライバシーを侵害したり、差別を助長する表現の書き込みを行うなど、さまざまな問題が発生しています。一人ひとりが、個人の名誉やプライバシー、インターネットを利用する際のルールやマナーに関する正しい理解を深めていくことが必要です。

性的少数者の人権問題

性的指向や性自認に関する偏見から、周囲の心ない好奇の目にさらされたり、職場などで不適切な取扱いを受けたりするなどの人権問題が発生しています。性的少数者に対する正しい理解や認識はまだ十分に進んでいません。性の多様性に関する正しい理解と認識を深め、偏見や差別を解消していくことが必要です。

刑を終えた人や更生保護対象者等の人権問題

刑を終えた人や更生保護対象者、またその家族に対する偏見や差別が社会復帰を困難にしている問題があります。一人ひとりが犯罪の防止と罪を犯した人たちの更生について理解を深め、それぞれの立場において力を合わせ、犯罪のない明るい社会をつくっていくことが必要です。

生活困窮者等の人権問題

生活困窮者の多くは、経済的な課題のみならず生活や就労、教育など、さまざまな面で支援が必要な状況があります。また、支援が必要な人ほど、地域から孤立し、自らSOSを発することが難しい状況があります。生活困窮者等が置かれている状況について理解を深め、適切な支援につなげる必要があります。

北朝鮮当局による拉致被害者等の人権問題

北朝鮮当局による拉致は、国民に対する人権侵害であり、生命と安全に関わる重大な問題です。この問題の解決には、国民および国際社会の理解と支持が不可欠であり、その関心と認識を深めることが求められています。

その他の人権問題

以上のような人権問題のほかにも、アイヌの人々に対する偏見や差別の問題、性的搾取等を目的とした人身取引の問題があります。災害時には、避難所でのプライバシーの確保のほか、女性、高齢者、障がいのある人、外国人等への配慮の必要性が改めて認識されています。また、被災者に対し、風評による嫌がらせやいじめなどの人権侵害も発生しています。

私たちの日常生活の場面は、家庭・地域、職場・学校などがあり、それぞれの場面に応じた判断の基準があります。その基準の中で、最優先される基本のルールとして、誰もが人権の考え方を尊重するようになれば、人権が私たちの日常生活の中に「文化」として定着し、豊かで暮らしやすい社会が実現するのではないでしょうか。